とても細かい子宮頸がんの日記。

子宮頸がんと診断されてからのあれこれをひたすらに細かく。

最初の病院 (2)

その後はネットでひたすら子宮がんについて調べを深めました。
学会、健康メディア、個人ブログ、アンケートサイト…
患者、医療従事者、ジャーナリスト、その他さまざまな立場や思いをもって発言する人がいます。
内容が相反するようなものも多く不安や混乱を抱くこともありましたが、とにかく手に入る限り多くの情報を集めよう、と躍起になっていた気がします。

休みか退職が迫っていることを思い「子宮筋腫の手術をするかもしれない」と、ほんのり同僚のひとりへ伝えました。
家族や友人、お付き合いしている彼にはまだ黙っていましたが、ベテランナースの友人ふたりにだけは病気を打ち明け、いろいろとアドバイスをもらいました。
どのみち彼女たちには適当な話をしてもごまかせません。

いっぽう、健診の結果が郵便で届いたりもしました。
「要精密検査」
うん、そのとおりだね!

そして約二週間後、検査結果を聞きに病院へ。
予約をしていても二時間待ちは当たりまえ。
人気のある産婦人科なのか、三回足をはこんでどのときも駐車場は朝から満車近く、待合室もすごく賑わっていました。
といっても、産婦人科というのは親御さんやパートナーさんが付き添ったり小さなお子さんを連れてこられるケースが多いので、人数が割増で多く見えてしまう部分もありますね。
明るくて綺麗な病院で、待合室ではどの女性もゆったりと落ち着いてみえました。

子宮がんは二~三十代での発症が多い疾病です。
妊娠をねがう日々のなかで診断され、子宮や卵巣を失ってしまう場合もあります。
たくさんの体験記を読むなかで「『がん』と聞いて目の前が暗くなった」「その場で泣き崩れた」というエピソードにも多く触れましたが、待合室で周囲の妊婦さんと自分の身を引き比べ心理的に打ちのめされてしまう方も多いようです。
私自身は妊娠の予定もなく、ある程度病気を覚悟しての受診だったのでショックはありませんでしたが、疾病の疑いがあるときはやはり、専門の病院で受診するほうがいいと思います。

先日の先生は相変わらず穏やかだったけれども、
「やはり子宮頸がんです。すぐに腫瘍科専門の先生に代わります」
と言われました。

そこから更に一時間ほど待たされ、再度診察室へ。
四十代半ばと思しき男性の医師は、ほとんど無表情で口調がとてもクールでした。
またも内診、そしてエコー。

「子宮体部の細胞診結果はクラス1、シロでした」
「子宮頸がん 腫瘍2cm程度、IB1期の疑いがあります」
「このまま進めることもできますが、ここはどちらかといえば産科が専門です。別のもっと専門的な病院へ行って精密検査もそこで進めるほうが貴女のためだと思います」

私は調べていた都内の某病院へ移りたい旨を伝え、紹介状をお願いしました。
系列の大学病院でないことで少し気がひけたのですが、先生はやはりほとんど表情を変えないまま「それがいいと思います」と頷き、てきぱきと看護師へ指示を出し手続きを進めてくれました。
予約の取りかたや電話番号まで丁寧に教えていただき、精算後すぐ病院の玄関脇で電話をかけました。
明るい午後なのに大粒の雨がぽとぽと降っていて、やってきては出てゆく妊婦さんたちが面倒そうに傘を開いたりたたんだりしていました。

「はい○○病院です」
「初診ですが、婦人科の予約をお願いします」
「うちは紹介がない方の診察をお断りしてるんですが」
「はい、××病院で紹介状をいただいておりまして」
「ああそうですか。どんなご病気ですか?」
「ええと」
ここでなぜか急にぐっとこみあげるものがありました。
何かを飲み込みながら
「子宮頸がんです」
と答えるときの声が少し震えてしまい、
「そうですか。ではちょっと確認しますね…」
と言ったスタッフさんの声が、さっきまでせかせかと面倒そうだったのが急にすこし和らぎました。
それを感じたとき、すごく悲しくなったのを覚えています。

ちょうど翌日にも診察可能とのことで、即予約をお願いしました。